美髯公 関羽


関羽 雲長 「三国志 15巻」より

三國志の人物の中でも「神」として崇められている武将は数少ないが
その数少ない中でも 一番有名な神となっているのが 蜀の劉備の義弟・関羽である。
世間一般には「関帝」や「関帝聖君」または「関聖帝君」と呼ばれるが最終的には位がいくつか附加していき
『三界伏魔大帝神威遠震天尊関聖帝君』という仰々しい名前になる。
中国の道教では「天尊」は最高位の称号なのでかなりの位の神である関羽を追ってみることにする。

関羽が劉備と初めて出会うのは、張飛が城門破りを行い雑兵に取り囲まれている時、
どこからともなく現れ 張飛は強いので自分が捕らえ後で太守の元へ届け出ると言い 雑兵の目の前で捕らえる
その捕らえ方が、もう少し普通にできんのかと思える手段である


1撃で狙い通りの場所へ鞭打ち さらには素早い縛り・・・見事な鞭さばき
「三国志1巻」より

どうも劉備と知り合う前からこの2人は面識があったようだが、只ならぬ関係か?と思われても仕方がないシーンである。
さすがは 横山御大・・・1巻から大男2人の緊縛シーンで腐女子も大喜びしそうなサービスショット。
これにはさすがに雑兵の隊長もドン引きなのか、冷や汗かきながら「引き上げます」とスタコラと逃げ去っていく。

その後、大枚をはたいた劉備の母親が場を設けてくれ、ここに有名な「桃園の誓い」を果たすことになり、
3人で義兄弟の契りを交わし劉備の配下となるのだが 酒を飲んだ途端、ここから下克上スタート
宴も終わり 関羽、張飛は酒席で居眠り 関羽にいたっては「ムーッムーッ」などという
イビキにも聞こえぬ声を出し大眠り、直後に張飛が目覚め 劉備と母の会話を盗み聞いてる所へ
近所の民が「義勇兵にしてくだせぇ」と志願していると、劉備がまだ一声も放たぬ間に、
先ほどまで「ムーッムーッ」と寝ていた関羽がいきなり
「よかろう よかろう、国を愛するもの全て参加しろ」
としゃしゃり出ては 予め決めていたのか いくつかの規則を劉備の許しも無く取り決め
「それが承知ならついてこい」
と君主気取りも甚だしい限りである。
挙句の果てには 劉備までもが早々と臣下に甘んじたのか 関羽に食料や武器がないと進言・・・
こんな越権行為を見逃して、それでいいのか 劉備よ・・・


何も知らぬ人が見ると 髭の親分と その子分Aにしか見えぬ
「三国志1巻」より

その後は 「劉備」の項でも述べたように 安喜県の小役人になった劉備は督郵に賄賂を贈らなかった事から
トラブルに巻き込まれてしまい、張飛が督郵を縛り上げそれを助けようとした所へ
とても神になる人間とは思えぬ失言を漏らしてしまう。


どうも「天下万民」には安喜県民は含まれていないようである
「三国志3巻」より


常々 こんな片田舎はイヤだと思っていたのか 力強いフキダシで力説する関羽
「三国志3巻」より

「こんな小さな村」とは一体どういうことか。
洛陽や長安以外は 住めた場所ではないと言わんばかりのセリフを放つ神。
もはや 安喜県は神に見捨てられてしまったと言っても過言ではあるまい。

暴挙はこれだけに留まらず、これが元で追われた劉備達は 張飛の知り合いの屋敷にかくまって貰い
なんとか危機を脱するのであるが、なんとこの屋敷に劉備が以前に助けた芙蓉姫という女性が
ここに身を置いており、劉備は夜な夜なこの芙蓉姫と逢引を繰り返してしまう。
どうもここんところの劉備の様子がオカシイのが気になった関羽は、夜に劉備を尾行し逢引の現場を押さえるのであった


この逢引シーンのコマの建物の影で関羽が覗いてるカットがあれば 尚よかった
「三国志3巻」より

劉備の人権どこへやら・・・
人のプライバシーなぞお構いなし
劉備も男である、そりゃ綺麗どころの芙蓉姫に好意を抱いても何も不思議は無い
だが、それが気に入らぬ関羽は張飛に文句を垂れては 食って掛かり なんとか劉備と芙蓉姫の仲を裂こうと企むのであるが
タイミングよく太守や巡察使が来るので それを口実に屋敷から出て行くことに。

その後も暴挙は続き、1度曹操に降り、劉備が生存していることを知ると、別れの挨拶の為曹操の元を数度訪れる。
だが曹操はわざと会わなかった為に 仕方なく劉備の元へ戻るための旅路にでるが
それを恥じた曹操は別れの挨拶を交わすため 関羽を追いかけ気持ちよく送り出してもらうことになる。
だが、曹操より関所を通る為の告文を持っていないため関所の守将は 都へ戻り告文をもらってくる様に説くのだが
「いまさら ここから都に引き返せるか」と世間のルールに従おうとしない。
もう曹操に追われる事もないので 無理に急ぐ必要もないのに・・・


ただ面倒くさいから戻りたくないだけだと思う。
「三国志18巻」より

いくら曹操が立ち去ってもよいとは言っても、必要なものは必要なのである
また守将の孔秀にとっては そんなことは知らぬ話しであり、告文を持たぬ関羽を通したら責任問題になりかねない
通過を許可しないのは当然の判断であろう、しかし関羽は自分の今までの武勇や名声を鼻にかけ
あろうことか 青龍偃月刀を孔秀の目の前でチラつかせては、おどしにかけるという傲慢さ。


もはや、やってることはヤクザとなんら変わらぬ
「三国志18巻」より

哀れ、任務を忠実にまっとうしようとした孔秀は 凶悪な関所破りと化した関羽に首を落とされてしまう。
この後も、行く先々の関所を破っては 守将の首をスパンスパンと刎ね、河口の入り口を守る秦[王其]に対しても
「秦[王其]よ、わしがどうやってここまできたか耳にはいっておろう ことごとく首と胴がはなれた」
と、ここでも脅し文句を浴びせては やはりスッパリと首を落としてしまう。
そして斬り終わった後に一言


良い事言ってる様だが、目つきが悪人
「三国志18巻」より

こんだけ斬るだけ斬って 言うことは立派なものだ
ちょっと都へ引き返していれば、全て回避できた殺生にも関わらず正当性を主張。
後に、怒った夏侯惇が追っかけて来て一騎打ちしてる最中に張遼が現れ仲裁に入るが この時は張遼に
「大切な部下を殺めた事を君から詫びてくれ」
と自分の悪行を他人に代わりに謝れと指示してスタスタと去っていくのであった。

劉備が漢中王になり 五虎将軍の筆頭として任命されても「黄忠や馬超と同列はイヤ」だのとギャーギャー騒ぎ出し
「そんな官爵いらぬ!」と子供の様に騒ぎだてる。


もうこの頃になると おおっぴらに私利私欲を行動にだしてしまう神
「三国志40巻」より

さて、文頭に書いた義勇軍への志願兵に対して関羽が取り決めた規則だが、実際にはこんな内容であった。


迫力のカットでの宣言だが 本人にこれを守る自覚はナシ
「三国志1巻」より

特に最初の3つを検討してみると、「将たる者の命令を守る」どころか将のプライバシーすらも守っておらぬ
「目の前の利益に惑わされず大志を持つこと」に至っては、これを述べつつタイムリーに大志や誓いを忘れ
君主の座を乗っ取り威張りくさる始末
五虎将軍就任時に、黄忠、馬超と一緒が気に入らんと我儘勝手・・・
とても、「自分の事よりも国のことを思ってる」とは受け取ることはできぬであろう。

そして 後半の3カ条の罪には打ち首、極刑、死罪と結局のところ全部同じなのであるが
うまいこと厳しい刑になる規則だけは守ってるというしたたかさが伺えよう。

これが今も絶大な人気を誇る神「関帝聖君」の正体なのだが、残念ながらこれでは神は神でも悪神、邪神である。

余談ではあるが、関帝聖君像で両サイドに付き従っているのは関平、周倉なのだが
関平は「関平帝君」として神の仲間入りを果たしているが
周倉は別に「周倉帝君」でもなんでもなく、「周倉」なのは少し可哀想な気がしてしまう。