不遇の軍師 陳宮


陳宮 公台 「三国志 4巻」より

三國志の人物の中で 郭嘉や張遼等のように 袁紹や呂布の元から曹操の幕下に加わったものは数多いが 逆に曹操の元を去り他の君主へ仕える武将というのは非常にレアである。
いつも人生の2択に迫られた時には必ずハズレをひいてしまう陳宮
今回はそんな陳宮にスポットを当ててみよう。
陳宮あたりだと非常に気が楽で楽で仕方が無い。

事の発端は曹操が一人で無謀にも当時肩で風を切るように幅を利かせながら歩いている董卓の暗殺に失敗してノコノコと逃亡している最中である。
当時、地方の役人をしていた陳宮は この曹操を幸運にもとっ捕まえる事に成功。
もうこの時点で大金持ち及び大名への10階級特進の確定演出である。

陳宮の初登場シーン 地方役人だけあってかなりラフな鎧だし 存在感もない顔だ
「三国志4巻」より

だがこの陳宮、他の仲間達が喜びに溢れて酒盛りを行っている最中に 牢屋に捕らわれている曹操に話し掛け
挙句の果てに ナントこの男は曹操を逃がし自分も逃亡するのである。

「怒り」とか「董卓」とかは漢字で喋っているのに「おもう」や「うらみ」等の
簡単な漢字をなぜがひらがなでしか喋れない陳宮

「三国志4巻」より

エラそうな講釈を垂れてはいるが 万民の呪いどころか 仲間からの恨みや怒りを買うような真似をしてもいいのか?
普通なら誰がどう考えても「大名」を選択すると思われるが 横光登場数コマで早々と誤った選択で不遇人生のスタートである。
この時点で人生負け組みになってしまったのだ

ノコノコとその場を逃げ去り 曹操の知り合いの呂伯奢の屋敷へ行くのだが ここで一行は何を勘違いしたのか
呂伯奢達が自分を捕らえようとしていると思い込み 一方的な殺戮を始めるのである。

わずか一振りしかしていないのに「ドカッ」「ドカッ」と
2段斬りを繰り出すという離れ業をやってのける

「三国志4巻」より

かなり切れ味の悪い剣を持っているのか 殴ってるかの様な擬音で次々と罪無き人々を殺戮していくのだが
この後 なんとこの家の者達が ご馳走にと猪を料理しようとしているのを 自分を殺そうとしていると間違えた事に気付くのである。
こんなドッキリにかこつけて暴虐の限りを尽くしてしまった陳宮・・・
やってることは 董卓となんら遜色のないものである。これではいつでも董卓軍の幹部に迎え入れられそうだ。

これだけ言訳の出来ぬ行為をしているにも関わらずに 全て曹操が悪いんだ と自分に言い聞かせ 夜な夜な野宿時には「おれはあやまった」との発言。
まったくである、最初から曹操を捕まえて董卓に差し出していればこんなことにはならなかったのだ。
知力が高い割にはかなり気付くのに遅かったが その間違いを正すため 急に曹操の寝首をかこうと剣を突き立てるのである。

豪傑でもなんでもないので へっぴり腰なのはご容赦願いたい
「三国志4巻」より

だが、またここでもこの男は同じ過ちを繰り返すのである・・
ここで孫策ばりに爽やかな表情で気持ちよくスッパリと首を落とせばよかったものの また選択を誤るのであった。
だいたい その男は董卓の寝首を取ろうとして失敗したばかりである 因果応報 遠慮は無用だったのに・・
人は同じ過ちを繰り返す・・・全くっ!
しかもこの直前まで罪無き人を斬りまくったにも関わらずなにが「武士らしくない」だ
ある意味さすが後に知恵者として活躍する人物である 口だけは達者のようだ
この後 曹操と共に董卓討伐軍を興す事となり 曹操は陳宮に1つ仕事を任せることとなる。

3コマともただただ 曹操のセリフを復唱するばかり
イチイチ確認せねばならぬ事か

「三国志4巻」より

己の身を危険に晒してまでも 命を守ってくれた人物に対しての仕事が「旗作り」である。
もっと重要な役目ならまだしも「旗作り」なのである。
よくよく考えればそれも当然かもしれぬ、曹操幕下の将は「カコウトン」や「ソウジン」「ガクシン」等だが
片や「チンキュー」なのだ。
これでは重要な任務を任せられそうにも無い 旗作りが関の山であろう。
だがとうとう愛想を尽かしたらしくこれを最後に陳宮は舞台から姿を消し、いつの間にか曹操の元を離れているのである。

さて時は流れ 董卓が呂布に殺され その呂布と曹操との戦いが佳境を極めようとしている時である。
呂布配下の陳登が蕭関へ向かうと あの男が待ち構えているのであった。

ノッポとデブチンというありきたりなツーショット
「三国志13巻」より

なんとあの冴えない量産型の様な顔つきの陳宮が全くの別人の顔で再登場したのだ
この数年の間に一体なにがあったのか? この顔の変貌は当に尋常ではないとしか言い様がないのだ
見違えるように目も見開き、立派に髯も蓄え一介の将としての貫禄が一目に伺える
曹操は髯も生えず 何一つ変わらぬ容姿であるのに、一体彼に何が起こったのであろう。
昔は旗作りという閑職を与えられていた彼が 今や一介の総指揮官である
しかも 容姿だけが変わったのではない、行動も髯の如く大胆そのものだ。
呂布軍が下[丕β]の城でこもっている所へ 曹操自らが降伏勧告を告げにき 知恵の足らぬ呂布はこれをあわや受け入れそうになるが
さすがは陳宮、「やい曹操!」と子供の口喧嘩の様な口調で曹操を罵るのである。
とても呂布軍きっての知恵者とは思えぬ程度の低い言い草である
そりゃそうだ、もし降伏しても 待っているのは旗作れとか ウソを言いふらせだのという仕事が待っているのである
挙句の果てには 便所を掃除せよだの 馬に餌をやれ 等と下男として扱われるのは知恵者には悟れたのであろう。
昔の恨みが今頃になって噴出してきたのか 弓を奪い取って曹操に一閃!

さうすが弓馬を取っては天下無双の呂布に仕えていただけあり
自然と弓のスキルが上昇したのであろう 頭部に命中

「三国志14巻」より

その思いっきりの良さを何故 あの野宿の時に出来なかったのであろうか。
今頃になって 頭に一発カンと当てただけではなんの役にも立たぬではないか。
しかし 曹操の首より上に矢を当てたのは 魏延と彼の2名のみである。
これだけは特筆すべきであろうことは忘れてはならない。

しかもそれを得意に力コブを諸将に見せ付け得意満面の御様子だ。

手の「グイグイッ」という描写が印象的だ
「三国志14巻」より

この為呂布と曹操は決戦を避けられぬ展開になり 窮地に追い込まれた呂布軍に陳宮は 一世一代の秘計である「掎角の計」を進言。

自信満々の表情での進言、横光陳宮・一番大きく描かれたシーン
呂布は何故か手書きセリフ

「三国志14巻」より

だが、相手が悪かった 無知というこにも三国無双の呂布である
「掎角の計?」と言っている意味が全然理解できていないようで 計略名を聞いただけでその表情は青ざめ汗だくなのだ。
陳宮一番の見せ場も結局この計は採用されることも無く 結局城は落とされ 呂布共々陳宮も首を刎ねられる。

思えば 曹操の救出、曹操抹殺のチャンス、その元を離れ呂布への仕官、どれをとっても全て悪い方向への選択肢を選んでしまったのだ。
陳宮が「かまいたちの夜」をプレイすると見事に何度も何度も恋人に殺されてしまうエンディングになるのは間違いない。

ちなみにアニメ版でも 陳宮の変貌振りは再現されている。

男塾ばりの眉毛が兜まではみ出る豪快さと 趙雲似の爽やかさを兼ね揃えている


顔の色から眉毛、目つき どうみても別の「陳宮さん」としか言いようが無い

だが声は同じなんだよな。
私的だが、呂布との掛け合いは 某ZZ乗りと某有名艦長のアニメを思い出さずにはいられん。